JOURNAL

vol.096

JOURNAL - 2021.01.26

JOURNAL - 2021.01.26

vol.096

サウンドスタイリストが手掛ける「音空間」

PORTAL POINT SHIBUYAに入居する、株式会社サウンドクチュール代表取締役大河内 康晴さんにお話しを伺ってきました。




株式会社サウンドクチュール 代表取締役 大河内 康晴さん

所在地  渋谷区神南町
業種   音楽・映像企画制作
面積   9.83㎡
入居時期 2020年9月
入居物件 PORTAL POINT SHIBUYA

INTERVIEW

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再開発により大きく街のカタチを変えていく“渋谷”
MIYASHITA PARKからほど近く、タワーレコード向かいに位置するPORTAL POINT SHIBUYAに、「株式会社サウンドクチュール」はオフィスを構えています。

同社は、空間に対し音を「デザイン」「セレクト」「スタイリング」「プレイ」するだけでなく、まるでオートクチュールの服のように細部にまで音のサイジングを徹底し、空間にフィットした音楽を提供しています。
今回は、同社の代表取締役兼サウンドスタイリストを務める、大河内 康晴さんにお話しを伺いました。

■ショールームのような空間に惹かれて

―以前より、リアルゲイトが運営する施設にご入居いただいておりましたが、今回オフィス移転に至った経緯についてお聞かせください。
元々入居していたPORTAL POINT AOYAMAの施設終了に伴い、新しいオフィスを探していたところ、リアルゲイトの方にご紹介いただいたのがPORTAL POINT SHIBUYAでした。
今まではパーソナルブースを使用していたのですが、SOUND CoUTUREという社名の通り、空間にオートクチュールのように音楽をデザインし提供している僕たちが、自分たちの空間を構えることで、会社のブランディングにも繋がるのではないかと思い、今回オフィスを構える決意をしました。
実際に内覧に行ってみて、他のオフィスではなかなかないガラス張りのショールームのような空間がすごく素敵で、それを活かした空間づくりをしたいなと思いました。

▲入居前

―渋谷という街にオフィスを構える意味や理由はありますか。
渋谷は再開発が進み、スクランブルスクエアやMIYASHITA PARKなど様々な世代をターゲットにした施設が続々とオープンし、街の雰囲気ががらりと変わりましたよね。
今までは渋谷=若者というイメージがありましたが、10代20代の頃に渋谷の街で遊んでいた大人たちがもう一度「渋谷っていい街だよね」と戻ってくる、世代や文化を問わない、多様な価値観が混ざり合う街に変わり始めた気がします。表参道や青山のような既に海外メゾンが軒並み並ぶある意味で完結された街とは違って、人も街の文化も変化し続けている、そして東京っぽい。そこに魅力を感じました。
また、すぐ近くのsequence MIYASHITA PARKや、今回入居したPORTAL POINT SHIBUYAのサウンドデザインを僕らが担当しており、ここにオフィスを構えることで、実際に現地で音を紹介できたり、今後の制作活動にも繋がると思いました。


―オフィスのこだわりやコンセプトについて教えてください。
スケルトン状態のガラス張りを活かして、大きなグリーンを入れた温室をコンセプトにしました。
曲を作るにあたりすごく考える時間が多いので、酸素が多いほうがいい(笑)と思い、グリーンは絶対に入れたいと思っていました。
約10㎡の空間ですが、訪れた人に「これで10㎡なの?見えない!」というサプライズを与えられたらいいなと思い、広く見えるようなコーディネートを工夫しています。
最近はインテリアも安く揃えることができるようになりましたが、本当のエコこそ物を捨てないで長く使うことだと思っているので、次に引っ越しをするときに何も捨てることがないよう、什器や椅子など本当に欲しいと思ったものだけにこだわりました。

▲入居後

■空間の空気感を音で表現

―今回PORTAL POINT SHIBUYAの全体音楽をご担当いただきましたが、ラウンジの音楽を制作する上で意識されたことはありますか。
音楽には周波数というものがあり、ラウンジはずっと作業していても邪魔にならない、むしろ心地よい周波数帯で作ることを意識しました。
ラウンジは、来客対応や会議など人との会話がスムーズにできる一方で、フリーデスクで集中して働いている人たちも過ごしやすい環境を実現できるよう音をデザインしています。入った瞬間に「このラウンジなんか居心地がいいな」と、感じさせることが僕たちの目的であり、使命です。どちらかと言うと音楽を作るというよりも、“空間の空気”を作るに近い気がします。
朝は1日の始まりを爽やかな気分で迎えられるような音楽を、11時過ぎから夕方17時頃までは打ち合わせや仕事がテンポよく進むような音楽を、20時以降は仕事も終わり、一息ついている人や渋谷の街に遊びに行く人、両者が心地よい気持ちになれるような、時間帯によってストーリーを描き、音をデザインして組み合わせました。

▲PORTAL POINT SHIBUYA 8Fラウンジ

―同じ空間に流れる音楽の中にもストーリーがあるんですね。
街や空間に合ったストーリーとコンセプトは毎回考えますね。そこに音のBPM(テンポ)、周波数や音色を合わせていくという感じです。
クライアントには、ストーリーとコンセプトを考えた上で、空間に合う音楽のジャンル、デザインを説明し、音の成分や音が空間に与える影響についてお話しします。インテリアや什器と違い目に見えない音を購入いただいているので、納得いただいた上で決めてもらいたいと思っています。
実際に音が完成してからその空間で流してみて、音の反響を確認し、最終調整を行います。音は空気の振動なので、空間にあるものに影響されるんですよね。音の反響を全て考えて、クライアントさんに最初にプレゼンした時のコンセプトとストーリーを完璧に再現し、期待以上の最高の状態でお渡ししたいと思っています。

■街や文化、ターゲット層を理解した上で音をデザインし、スタイリング

―今後のオフィスと音楽の可能性についてどうお考えになりますか。
今回のコロナ禍で在宅勤務が増え、マンション内に共用の作業スペースを作る事例が少しずつ増えてきましたよね。実際にそういう空間に音楽を入れるご相談もいくつかいただいているのですが、今までであれば通勤によって働くモードに切り替えられていた部分を、同じマンション内でありながらも、気持ちが切り替わるような空気感を作ることが重要であると考えます。

また働くモードというのは、働くエリアによって異なると思っていて、例えば、丸の内で働く人は仕事とプライベートのオンオフがはっきりしているだろうし、渋谷で働くクリエイターなどはプライベートで吸収したものが仕事に繋がっていたりもする。その街の文化や、利用者ターゲット、雰囲気に合わせて音をデザインしていくことが重要だと考えます。
音を空間に入れるということは香りと同じで、目には見えないけれども人間の脳にダイレクトに響くんです。仕事中に失恋した時に聞いた曲が流れてきたら、自然と思い出してしまうような(笑)それくらい感情に直接的に来るものなので、空間の音を一から作るということはすごく大事なことだと思います。
あの空間って何かいいよね、あのオフィスってなんか心地いいよねという「なんか」に人は自然と集まるので、今後は目に見えないもののブランディングはもっと重要視されていくのではないでしょうか。

―最後に今後の展望についてお聞かせください。
僕は空間の音楽を通じて、その空間で過ごす人たちが心地よいと感じ、一人一人の幸せに繋がっていたらそんな素晴らしいことはないと思っています。
デザインとしてかっこいい音楽を作るのは当たり前のことですが、それだけではなく、その空間で過ごす人たちがいかに心地よく過ごせるか。それが僕らの目的で、追求していくところです。

多くのクライアントを抱え、様々なシーンにおいて空気感を音で完璧に表現するSOUND CoUTURE。
同社がデザインした音楽は、これからも私たちの日常に溢れていくことでしょう。

■Company Profile
会社名: 株式会社サウンドクチュール
HP  : http://soundcouture.jp/
業種 : 音楽・映像企画制作
創立年: 2017年11月

■物件情報
名称   : PORTAL POINT SHIBUYA
所在地  : 東京都渋谷区神南1-11-3
構造   : 鉄骨鉄筋コンクリート造 地下1階地上8階建
竣工年  : 1975年4月
リノベーション竣工: 2020年9月
WEBSITE :https://portalpoint.jp/shibuya/