JOURNAL
vol.108
JOURNAL - 2021.05.28
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vol.108
清澄白河から宇宙へ。フレキシブルな働き方を実現するクリエイティブオフィス
THE BREW KIYOSUMISHIRAKAWAに入居する、株式会社Synspective熊崎 勝彦さん(Head of PR)、芝 雄正さん(HR Manager)にお話しを伺いました。
株式会社Synspective
Head of PR 熊崎 勝彦さん、HR Manager 芝 雄正さん
所在地 江東区三好
業種 ITサービス
面積 897.94㎡
入居時期 2019年10月
入居物件 THE BREW KIYOSUMISHIRAKAWA
隅田川をはじめ東西に多くの運河が流れ、清澄庭園や木場公園など自然豊かで穏やかな空気を感じる街、“清澄白河”。
多くのアートギャラリーによって根付いたアート文化や、サードウェーブコーヒーの先駆けとなったロースターカフェ、ものづくりに勤しむ職人達のクラフトマンシップなど、様々なカルチャーが交差する人気のエリアです。
そんな街のアイデンティティを継承し、ものづくりの発信場所としてオープンしたTHE BREW KIYOSUMISHIRAKAWAに、株式会社Synspective(シンスぺクティブ)はオフィスを構えています。
▲THE BREW KIYOSUMISHIRAKAWA 外観
同社は、小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発から衛星データ解析・ソリューション提案まで、ワンストップで提供する急成長のベンチャー企業です。宇宙スタートアップでは、創業からわずか1年5カ月で世界最速・国内最大規模の資金調達を実施するなど、国内外で注目を集めています。
今回は、同社のHead of PRを務める熊崎 勝彦さんと、HR Manager 芝 雄正さんのお二人にお話しを伺いました。
▲左:芝 雄正さん(HR Manager) 右:熊崎 勝彦さん(Head of PR)
■ 衛星データ取得とデータ解析で、地球上のさまざまな課題を解決
―はじめに、御社の事業内容を教えてください。
衛星データ取得とデータ解析を通して社会課題を解決することをミッションに、小型SAR衛星による観測データを活用したワンストップソリューション事業を展開しています。
具体的には、内閣府「ImPACT」プログラムの成果を応用した独自の小型SAR衛星から取得した膨大な地球観測データを解析し、政府や企業にソリューションサービスを提供しています。
「小型SAR衛星群」と「データ解析テクノロジー」の2つを事業軸に、自社で小型SAR衛星を持ち、データ解析ソリューションを提供している会社は世界でも弊社だけです。
―SAR衛星の特徴やデータ解析ソリューションについて教えてください。
まず、SAR衛星の特徴は、曇りでも、雨でも、夜でも、天候や時間に影響を受けることなく地球を観測できることです。一般的な光学センサーで観測する光学衛星(注1)は、地球のデータ取得範囲が25%程度に留まるのに対し、レーダー(注2)を地球に照射するSAR衛星は、100%のデータ取得が可能です。そのため、雨期が長く地表が雲に覆われることが多いアジア地域などでもSAR衛星が有効活用できると期待されます。
しかし、大型のSAR衛星はサイズがとても大きく、重さも1トン以上、さらに開発や打ち上げに数百億円ほどのコストがかかります。一方で、弊社が内閣府の「ImPACT」プログラムによって造り上げた小型の衛星は、100kg級のサイズで、製造と打ち上げを合わせて10億円以下のコストで対応できます。
昨年、自社の小型SAR衛星を初めて打ち上げ、今年2月に民間では国内初の衛星画像取得にも成功しました。これらの衛生データを活用して広域の地盤変動を解析し、地滑りや地盤沈降のリスクなどを測定するサービスや、災害による浸水被害状況を判断するためのソリューションサービスを提供しています。
今後の目標は、2023年までに6機、2020年代後半に30機の衛星群を構築することです。30機ほどSAR衛星を飛ばすことができれば、世界のどの地域で災害が発生しても2時間以内に最低1機の衛星が災害箇所を観測することが可能になります。(※6機では1日以内)
(注1) 光学センサーを搭載する情報収集衛星
(注2) 電波を使って対象物の様子を探るセンサー
▲光学衛星とSAR衛星の比較画像
■ 働きやすい環境で、みんなが出社したくなるオフィスをつくりたい
―THE BREW KIYOSUMISHIRAKAWAにオフィスを構えた理由についてお聞かせください。
弊社がオフィスを選ぶ上で、譲れないポイントをすべて満たしたオフィスが「THE BREW KIYOSUMISHIRAKAWA」でした。
まず重視したポイントは、衛星を搬入出できるサイズの出入口です。造っている衛星の大きさは一辺70cmでコンパクトですが、衛星を傷つけないように大きな輸送コンテナで搬入出するため、一般的なオフィスビルの出入口では幅が足りず、搬入出できないことが一番の課題でした。
その点、THE BREW KIYOSUMISHIRAKAWAはリノベーション前、電気メーカーの工場だったことから衛星の開発に必要な設備や電力もある程度備わっていて、出入口の幅も問題なくクリアしていました。
そして二つ目のポイントは、フレキシブルな働き方を実現しつつも、出社したくなるようなオフィスであることです。
もともとコロナ禍前から働く場所や時間を自由に選択できるフレキシブルワークを推進しており、オフィスでしか作業ができない場合が多い衛星開発チームは出社していますが、データを解析するチームや他部署は必ずしもオフィスに来る必要はないため、チームとして最大限パフォーマンスを発揮するためにも柔軟にリモートワークを取り入れています。とはいえ、たまにはオンラインではなくリアルに顔を合わせることも必要だと考え、みんなが出社したくなるようなオフィスをつくりたいと思いました。
内装を自由にカスタマイズできることや、周辺にギャラリーや美術館、お洒落なカフェが点在する理想的な環境だったことも入居の決め手になりました。
▲ブルーボトルコーヒー
▲オールプレス・エスプレッソ東京ロースタリー&カフェ
―清澄白河の街も理想的だったということですね。
そうですね。清澄白河は都心のオフィス街と違って静かで、道が広くて空が高いところが気に入っています。
穏やかでのんびりとした街の雰囲気が心地良く、少し歩けば東京現代美術館やアートギャラリー、お洒落なカフェがたくさんあるので、仕事で煮詰まったときは外を散歩して気分転換したり、悩んでいるメンバーがいればコーヒーを飲みに誘って積極的にコミュニケーションを図っています。
仕事へのモチベーションや生産性の向上を考えれば、オフィスと同様にどんな街で働くかということも重要だと思っています。
▲東京現代美術館
▲木場公園
■ 働く人や訪れる人のことを考えた居心地の良いオフィスデザイン
▲ソーシャルをテーマにした1階エントランス
―コロナ禍によって働き方は変化しましたか?
もともと弊社はリモートワークを導入しており、入居当時からテレワークやオフィス出社を自由に選択できる環境を用意していたので、働き方の変化はあまり感じませんでした。
コロナ禍前との変化を一つ挙げるなら、オフィスへ行きたいけれど強制的にリモートワークをした点です。昨年の緊急事態宣言直後はフルリモートになったことで、チームのコミュニケーションやモチベーションの維持など大変な部分もありましたが、今は新しい働き方に合わせて十分なコミュニケーションが取れています。
現在も緊急事態宣言(※2021年4月26日時点)を考慮して原則リモートワークですが、どうしても書類を処理しなければならない場合や、現場をケアする必要があるときなどはオフィスへ出社しています。
―オフィスのコンセプトやこだわりを教えてください。
社員やクライアント、そしてパートナー企業の方々が「自然と訪れたくなるような雰囲気のオフィス」がコンセプトです。
地下1階から3階までフロアごとにテーマを設け、事業とリンクした「地球と宇宙」を連想する色をメインカラーに構成しています。
地下1階のテーマは「ラボ」で、ここでSAR衛星の開発を行っています。
室内にリフトを設置して衛星の搬入出ができるように設計し、衛星開発に必要な精密機器を取り扱うためのクリーンルームがあります。人工衛星に関連する技術であるため、セキュリティが厳重になっています。
1階のテーマは「ソーシャル」です。
入口から「地球と宇宙」のコンセプトを感じてもらえるように、宇宙空間や大気圏内をイメージしたデザインで、みんなが集まりやすいようにオープンスペースを設けました。自然な発想を促す意図で作ったひな壇やプロジェクタースクリーン、キッチンスペースを設置し、コロナ禍前はワークショップを頻繁に開催していました。
社員だけでなく、お客さまにもリラックスしていただけるように開放的な空間設計を意識しました。
2Fは執務スペースとなっており、テーマは「カジュアル」です。
弊社は海外メンバーが3割、年齢層も20代~60代と幅広く、各分野で専門性の高いメンバーが集まっています。気軽なディスカッションや立ち話しを通じて、新しい発見や仕事に活かしていくことを大切にしているので、コミュニケーションが取りやすく賑やかなワークスペースを意識して設計しました。
執務スペースは集中する場所にスペースカラーを、リラックスする場所にはヒューマンカラーを取り入れて、色で識別できるようにしています。ハイテーブルとハイチェアは、気持ちを切り替えたい時などに活用し、よりラフな姿勢で打ち合わせを行いたい時はスタンディングスペースを使用しています。
3Fも執務スペースですが、テーマは「フォーカス」です。
より静かな場所で集中して作業に取り組みつつ、息抜きができる空間も設けています。基本的に、社長や役員含め全員フリーアドレスなので社員同士の距離が近く、どのフロアもリラックスして過ごせるように工夫しています。
▲3階 執務スペース窓際にはリラックスできるソファスペースを設置
―御社にとって「オフィス」とはどんな場所ですか?
まさに、コミュニケーションの場所だと思います。ただ、強制的にオフィスに集まるということはしたくないですね。
コミュニケーションする、集まることを必須にするのではなく、みんなが出社したくなる、自然と集まりたくなるようなオフィスでありたいと思っています。そんな想いを込めてオフィスづくりに取り組んでいます。
■ データドリブンで進歩する世界と「社会情報インフラ」を目指して
―最後に、今後の展望についてお聞かせください。
私たちの目標は、衛星のデータ解析ソリューションの提供を通じて、社会情報インフラとして社会課題解決に貢献することです。
今回、コロナ禍で私たちが学んだことは「データの⼒」です。例えば、2020年の1月頃はCOVID-19によって世界に何が起きているか、まだよく理解できていませんでしたが、数ヶ月経って様々な統計データが出てきたことで各国の政府や病院が施策を打てるようになりました。同様に、宇宙から得られる膨大なデータも経済活動に⼤きな影響を持つ都市計画やインフラ開発の効率化、自然災害への対処などに活用することができます。
私たちが多くのSAR衛星を打ち上げ、安定的にデータを取得できるようになれば、災害対応に使えるデータも多く得られるようになります。さらにこれを世界規模で行うことができれば、重要な社会インフラのひとつになります。
もちろん災害だけなく、コロナウイルスの施策や政策、より良いビジネスの意思決定などにも活用できるように、どんどんデータを提供していきたいです。
データドリブンで、失敗もきちんと分析して成功につなげる世界をつくっていきたいと考えています。
昨今、盛り上がりをみせる宇宙ビジネスの最先端を走る株式会社Synspective。
世界で拡大する衛星データの活用と同社の活躍から目が離せません。
■ Company Profile
会社名: 株式会社Synspective
HP : https://synspective.com/jp/
業種 : ITサービス
事業内容:衛星データを利⽤したソリューションサービス、
および⼩型合成開⼝レーダー衛星の開発と運⽤
設立:2018年2月
■ 物件情報
名称 : THE BREW KIYOSUMISHIRAKAWA
所在地 : 東京都江東区三好3-10-3
構造 : (事務所)鉄骨鉄筋コンクリート造 地下1階地上5階建 (店舗)木造
竣工年 :(事務所)1998年3月(店舗)/2019年11月
リノベーション竣工: 2019年8月
WEBSITE :https://thebrew.jp/