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JOURNAL
2026.08.07

ペインター
AICON

池尻大橋にある、ショップ・オフィスからなる新築複合施設「ECLINE(エクライン)」。4F共用ラウンジのアートワークを手掛けたペインター・AICONさんをご紹介します。

独自の視点で人物や事象を描き出すペインター・AICONさん。
”THE HUMAN UNIVERSE IN NEO CLASSIC”をテーマに、グラフィックデザイナーやWebデザイナーを経て2014年よりアーティストとしての活動を開始。ソリッドで美しい線画と独自の世界観で注目を集めるAICONさんに、自身のルーツや作品に込められた哲学、そして「ECLINE」のために描き下ろされたアートワークへの想いについて、お話を伺いました。

ペインター
AICON

神戸市出身のペインター。京都精華大学洋画学部で油絵を学んだのち、グラフィックデザイナーやWebデザイナーを経て2014年より活動を開始。”THE HUMAN UNIVERSE IN NEO CLASSIC”をテーマに、クラシカルかつ新たな切り口から描かれる作品は、その独自の世界観が注目を得て、幅広く活動をしている。

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―AICONさんが絵を描き始め、アーティストを志したきっかけを教えてください。

「アーティストを目指した」という明確なきっかけがあったわけではなく、グラデーションのように自然と現在へ繋がっています。
小学生の頃から絵を描くことや工作が好きで、母も絵を描くのが好きな人だったので、日常のすぐ近くに「描く」ことがありました。学生時代、世界史の教科書にあった西洋美術を見るのがすごく好きで、その流れで高校はデザイン科のある学校に進学し、「もっと絵を描きたいな」と思って美大へ進学しました。生まれてこの方、ずっと描くことが近くにあったので、私にとっては完全に「ライフワーク」でしたね。だからこれといった特別なきっかけというよりは、ライフワークが仕事になったという感覚があります。

なので、絵を本業にするという発想すらあまりなく、高校時代から触れていたPhotoshopやデザインのスキルを活かして、2021年の年末までグラフィックデザイナーやWebデザイナーなどの仕事をしながら絵描き活動をしていました。


―そこから、現在の作風に至るまでにはどのような経緯があったのでしょうか。

実はこれもすべて地続きで繋がっています。
幼少期によくある感じで、架空の女の子を描いていたことが私の原点だと思います。憧れやコンプレックスや欲望の表出ですよね。
だから私の中で「絵を描く」という行為の中に、風景や空想世界を描くみたいな文脈がなくて、「絵を描く=女の子を描く」だったんですね。薄々気づいてはいたけど、まだ私それやってるなと。

大学時代は友人や母親をモデルに写真を撮って油絵でフォトリアリズム的に描写する時代がありました。でも、当時色を何色も作って重ねていく作業がどうも難しくて。デッサンなら気持ちよくできるのに、着彩になった瞬間苦しくなる。じゃあ、「デッサンの要領で明と暗の2色だけで描いたらどうなるだろう」と思って、肌色と茶色だけで人物を描く表現を試しました。すると一気に描きやすくなって、「これだ!」と一層ペインティングを楽しめるようになりました。

その後、「超弦理論(すべての物質の根源はエネルギーの糸の振動であるという理論物理学の説)」の本に出会い衝撃を受けたんです。「エネルギーの糸の振動って、これで表現できるんじゃないか」と思って描き始めたのが、現在のストライプ調の作風です。これも線の太い細いという「明と暗」で表現できるので、描いている感覚としては昔やっていたデッサンや2色着彩と一緒なんです。


―AICONさんの作品は、物理学的なアプローチと人間的なテーマが不思議なバランスで共存していますよね。

よく絵を描く人は「文系」と括られがちですが、私の脳のつくりは理系要素が大きいと思います。
様々な文化的なカルチャーも好きだし憧れるけど、「理論物理学の教科書の図解」みたいなアプローチにより惹かれます。

同時に、昔から「人間って何なんだ」という興味や葛藤がずっとあるのですが、人間関係や感情に疲れた時、物理の視点に立ち返ると「人間も結局は無機物(物質)の塊だしな」と思えて、いい感じに手放せるんです。だから私の作品は、感情をあえて削ぎ落とした「無機質な図解」のようなヒューマンドラマが入っているんだと思います。


―今回「ECLINE」のために描き下していただいた作品のコンセプトやテーマについて教えてください。

最初に内装イメージを見せていただいた時、グリーンやベージュなどの柔らかな色合いが基調になっていると感じました。
そこに引き立つ色として、最近の私のマイブームである「絶妙な黄色」を取り入れて制作しました。

空間に合わせすぎたテーマを設定するのではなく、あえて、私自身の日々の制作のムードや流れをそのまま表現に落とし込んでいます。オフィスのラウンジという、多様な人々が行き交う空間の中で、私の日々の思考の延長にある作品が自然に馴染んでくれたらと思っています。

また、鑑賞者が自分の中でストーリーを展開させていくのが絵画の持つパワーだと思っています。映画や小説と違って絵画はそれ以上変化しません。だからこそ、ここを訪れるワーカーやクリエイターの方が作品を見た時に、何かを連想したり、心がフッと動いたりするような「思考を展開させるツール」になれば嬉しいです。


―これまでの活動で特に印象に残っている、挑戦的だったプロジェクトはありますか?

以前手掛けた、「巨大な壁画」のプロジェクトですね。間違いなく今までで一番大変で、そしてとても楽しかったです。

普段の制作は自宅やアトリエにこもって一人で黙々と描いていますが、その時はあまりにも巨大だったため、総勢8人のチームで制作しました。足場を組んでもらい、プロのノウハウを借りながら9日間かけて描き上げました。

チームでモノづくりをする楽しさは一人で描く時の何倍も大きく、「本当に完成するのかな」という不安を乗り越えて出来上がった瞬間の達成感は、忘れられない素晴らしい経験になりました。


―AICONさんが今後取り組んでいきたい表現や、今後の展望について教えてください。

今、自分の中でこれまでずっと描き続けてきたライフワークとしての制作をベースにしながらも、より柔軟に表現を広げていけたらと模索してチャレンジしているところです。日々の制作の中で少しずつ変化していく私の新しい表現を、ぜひ楽しみにしていてほしいです。

●Other projects


01.
「The Sound」

Oil on cavas
500 x 606mm
2025


02.
「Over There」

Acrylic on cavas
727 x 910mm
2024

「ECLINE」について

都心に近接しながらも穏やかな空気が流れる池尻大橋エリアに位置する、ショップ・オフィスからなる新築複合施設。「間(あわい)が生むゆとりを楽しむ」をコンセプトに、住む場所と働く場所が心地よく交わる池尻大橋ならではの特徴を活かし、日常に「ゆとり」と「つながり」を感じられる空間を構築しました。デザインディレクションは「LINE-INC.」が手掛け、4F共用ラウンジにはAICON氏が描き下ろしたオリジナル作品が飾られています。

名 称:ECLINE/エクライン
所在地:東京都目黒区大橋1-1-2
交 通:東急田園都市線「池尻大橋駅」徒歩7分

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