現代美術家
cobird/コバード
1977年神奈川県生まれ。玉川大学文学部デザイン科卒業。 アパレルメーカーでデザイン業務に従事しながら、布帛、編み物の基礎を学ぶ。生地組織への造詣と、強く影響を受けたストリートカルチャー、特にヒップホップ、ラップミュージックのサンプリング手法が活動のベースとなっている。現在は東京を中心に個展やグループ展で作品を発表、またファッションブランドやミュージシャンへアートワークを提供するなど、様々なシーンで活動する。
現代美術家
cobird
千駄ヶ谷にある、カフェ・オフィスからなる複合施設「B TRACK(ビートラック)」。共用ラウンジのアートワークを手掛けた現代美術家・cobirdさんをご紹介します。
千駄ヶ谷にある、築57年の歴史を重ねた建物を再生した、カフェ・オフィスからなる複合施設「B TRACK(ビートラック)」。本施設の共用ラウンジには、千駄ヶ谷の過去と現在が交差するアート作品が展示されています。
手掛けたのは、印刷物を短冊状に切り刻み、手作業で織物のように編み込んでいく独自のコラージュ作品で知られる現代美術家・cobird氏。アパレル業界から35歳で現代美術の世界へ飛び込んだという異色の経歴を持つ同氏に、活動のルーツや独自の技法が生まれたきっかけ、そして本施設のために制作されたオリジナル作品に込めた想いを伺いました。
現代美術家
cobird/コバード
1977年神奈川県生まれ。玉川大学文学部デザイン科卒業。 アパレルメーカーでデザイン業務に従事しながら、布帛、編み物の基礎を学ぶ。生地組織への造詣と、強く影響を受けたストリートカルチャー、特にヒップホップ、ラップミュージックのサンプリング手法が活動のベースとなっている。現在は東京を中心に個展やグループ展で作品を発表、またファッションブランドやミュージシャンへアートワークを提供するなど、様々なシーンで活動する。
玉川大学の文学部にグラフィックデザイン科があり、そこでデザインを学びました。当時は現代美術とデザインの違いもよくわかっていませんでしたが、ビジュアル表現が好きだったので、デザインに関われるアパレルの生産管理の会社に入社し、十数年お世話になりました。
転機となったのは35歳の頃です。サラリーマンとしての働き方は私にはあまり向いていないと思い、会社を辞めることを決意しました。どうせだったら自分のやりたかったことをやろうと考えて、現代美術の道へ進むことにしたのが始まりです。
大前提として、ビジュアル表現であれば何でもいいと思っていて、本来、ジャンルってあってないように感じています。今はすごくボーダーレスな時代で、メディアの選択も自由ですよね。ただ、デザインやファインアートは、私にとってルールが難しくて敷居が高いように感じていました。
現代美術って、言葉は少し複雑に聞こえるかもしれませんが、実は一番誰にでも門戸が開かれていて、幅広い表現が可能な世界だと思っています。極端に言えば、どんなマイノリティにも広くチャンスを開いてくれる場所。そういった自由さに惹かれ、現代美術の道を選択しました。
キャリアを重ねる中で「自分が作るべきものは何なのか」を考えるのは、常に抱えている宿題のようなものです。そんな中、アーティスト・イン・レジデンスのプログラムで2回ほど海外に滞在した際、現地の作家さんと話しる中で初めて「自分は手先が器用なんだ」ということに気づいたんです。
ただそれは私が特別というわけではなく、日本の小学校の「図画工作」といった教育プログラムの賜物であり、日本人の多くが持っているアイデンティティだと感じました。 私が用いている織物の構造も、実はすごく単純なループの繰り返しです。アパレル時代の経験から、中国の縫製工場や日本の機織りの現場を見てきましたが、それは昔から多くの女性たちが根気強く繋いできた、どんな人にも開かれた手仕事でした。私はそこが重要なポイントだと思っていて、今も工作的な手法、主に織物の手法を引用してものを作っています。
現代美術を始めてからペイントなどもチャレンジしたのですが、どうもしっくりこず、アパレル時代の友人からも「らしくないね」と言われ、数年ほどもがいていた時期がありました。
そんな時、六本木の森美術館でベトナム出身の作家、ディン・Q・レ(Dinh Q. Lê)の「フォトウィービング」という作品に出会ったんです。ベトナム戦争の映像や写真と、アメリカの黄金時代の映画のシーンを組み合わせたもので、彼のおばあさんたちが昔からやっていた「ござ」を編む手仕事の手法で作られていました。
それを見て、現代美術のアプローチとしてこういう工芸的な手法を用いるのは面白いなと衝撃を受けました。彼の作品はござのように折り目が大きかったのですが、アパレル時代の経験でファブリックの構造を理解していたので、自分ならもっと細かくして、違うアプローチの表現ができるんじゃないかと考え、織物のウィービングコラージュを始めたのがきっかけです。
「B TRACK」のコンセプトをお聞きして、歴史が深い千駄ヶ谷という街は、時代によっていろんなリズムがある場所だなと感じました。そしてできるだけ物件のレガシーや歴史が感じられる作品を提案したいと思い、これまでも作ってきた「地図」を使った作品を提案させていただきました。
B TRACKオリジナル作品が並ぶラウンジ
このビルが竣工した1960〜70年代の古い地図(航空写真)と、2026年の現代の白地図を組み合わせています。作品のちょうど真ん中が、この物件の中心になるように配置しました。
元々カラーが違う地図を組み合わせていて、右側は色を反転させたものを取り入れています。プロジェクトチームの方々とディスカッションする中で、「B TRACK」の「B面」(トレンドの発信地・原宿や表参道などのA面に対して、独自のクラフトマンシップや文化が息づく千駄ヶ谷)のイメージにも繋げたいとおっしゃっていたので、同じ柄で対照的な色になるものを使うことにしました。
制作の上では、昔の地図と今の地図の記号や線がぴったりと重なり合うように細かく位置を調整しています。ここを利用する方が作品を見て、「昔はこの建物がなかったんだな」とか「新国立競技場もまだないな」と、街の変化を読み取って楽しんでもらえたら嬉しいですね。
築57年の建物を活かしたB TRACK外観/屋上からの眺め
ビジュアルを選定してパソコン上で組み合わせていくデータ作成には時間がかかるのですが、プリントアウトして、いざ手作業で織り込んでいく工程は、皆さんが想像されているほどの時間はかからないんです。作業中もラジオやラップミュージックを聴きながら、リラックスしてやっています。
「実は誰でもできる作業」であるということがポイントだと思っています。現代美術というのは、いかに「権威的でないか」が重要だと思っていて、誰にでもできるとか、誰でも思いつくということの方が、私にとっては魅力的に感じます。
作品のアイデアも、ビジュアルのかっこよさだけでなく「構造」から入ることが多くて。例えば言語の骨格の違いを表現するために日本語と英語のWikipediaのページを組み合わせたり、動画の連続性をひとつの物質にするために映画を一コマずつプリントして組み合わせたり。そうした構造に沿って最適な素材を選んでいくのが、私の方法論なのかもしれません。
01.
Title : inter(sanpakoi)section 2023年
タイにてチェンマイデザインウィークに参加した際の野外大型プロジェクトです。
高石祐太郎さんがキュレーションするスペース企画にあたり、写真家、横溝光太郎さんの作品とのジョイントワークになりました。
02.
Title : 60☓100 (振り向き振り返る女) 2020年
藤沢市アートスペースにて企画展Ⅵ「変容のありか 流れる時間の捉え方」参加時の展示風景になります。映画をモチーフにした本当のスクリーン大の作品をメインで展示しました。
今後はよりスケールの大きな表現にチャレンジしていきたいですね。スペースの確保や発表の場の制約はありますが、美術館での展示や、ビエンナーレ、トリエンナーレのような芸術祭で、じっくり時間をかけて大きな作品を作り上げるようなプロジェクトにも挑戦していきたいです。そういったスケール感で自分の世界観を表現ができる作家になっていきたいと思っています。
渋谷区千駄ヶ谷一丁目に位置する築57年のビルを再生した、カフェ・オフィスからなる複合施設。千駄ヶ谷の歴史やこの地に根付くモノづくり、多様なカルチャーへの尊重をコンセプトの核に据えています。ここから生まれる多様な表現を新たな「足跡」として刻み、次代を担うクリエイターが集う文化創造拠点を目指します。
名称:B TRACK/ビートラック
所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷1-19-9
交通:JR中央線・総武線「千駄ヶ谷駅」徒歩5分
都営大江戸線「国立競技場駅」徒歩5分
東京メトロ副都心線「北参道駅」徒歩9分