JOURNAL

vol.010

JOURNAL - 2018.11.22

JOURNAL - 2018.11.22

vol.010

オフィスの中に公園を創り出す

青山フラワーマケットを運営するパーク・コーポレーションの空間デザイン事業parkERsさんのオフィスを訪問しました。



parkERs 梅澤伸也さん




所在地 港区北青山
業 種 空間デザイン
面 積 72㎡
入居時期 2016年4月
入居物件 PORTAL POINT AOYAMA

INTERVIEW

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青山フラワーマケットを運営するパーク・コーポレーションの空間デザイン事業parkERs. 会社名のparkERsの大文字ERは人を表し、またエマージェンシールーム(救急救命室)のERを意味しているといいます。人と緑の関係を強調し、そして今この世の中の人たちには緊急に緑の処置が必要という思いが込められ名づけられました。



青山表参道に位置するシェアオフィス「PORTAL POINT AOYAMA」の中に彼らのオフィスはあります。ブランドコンセプト〝日常に公園の心地よさを” を具体化したというオフィスは、公園を思わせる植物や、柔らかな光、水音などの要素が取り入れられた心地良い空間。〝緑で人々に豊かな時間を提供する”という思いのもと緑を活かした空間デザイン、施行、コンサルティングを行っています。そんな空間創りのプロである彼らのオフィスの在り方やコンセプトについて、ブランドマネージャーの梅澤さんにお話を伺ってきました。


フィロソフィーを具体化できる場所

木々の木漏れ日や、水の流れる音。たくさんの緑に囲まれたその空間はオフィスにも関わらず、居るだけでやすらぎをもたらしてくれます。一度この環境に身を沈めれば、もう二度とありきたりなオフィスには戻れないんじゃないか…あまりの居心地の良さに、ついそんなことを考えてしまいました。



2013年の創業当初は青山フラワーマーケットの研修所の一画で、社内ベンチャーとしてスタートした同社。社員数も初めは4人だったそう。事業のニーズが拡大していくと共に、徐々に社員も増え、スペースが手狭になってきたタイミングで、本社から離れ彼らの考える「緑と人との共存の空間」を体現するため独自のオフィスを構えることにしたそう。そのためには、ある程度自由に創りあげられる場所が必要だったといいます。



梅澤:
姉妹ブランドが青山フラワーマーケットという屋号なので本社のある青山から離れられず、物件があってもここまで自由にデザインさせてくれる場所はなかった。物件探しにはとても苦労しました。




物件探しには一年ほどの期間を費やし、候補の中には古民家もあったといいます。そして、社員の方がたまたま見つけたのが、ここ「PORTAL POINT AOYAMA」。当時、同施設が改修中だったこともあり、自由に設計ができた点と、原状回復が必要ないという点がとても魅力的だったとか。またシェアオフィスというのも決め手の一つだったと梅澤さんは言います。「これまでとは違った様々な異分野・異文化の人と関わることで、何かしらの化学反応が起きるのではないか」そんな期待もあったといいます。



梅澤:
入居してから、他の入居者様を通して撮影に使っていただいたり、PORTAL POINT AOYAMAに来客された方がうちのオフィスを通りかかって興味を持ったり、実際に緑を購入して頂いたりなど、ここにオフィスを構えたことで、これまでとは違った出会いや刺激が生まれています。




同社がクリエイターとの交流を求めてセミナーなどに参加しても、事業上、インテリアや建築関係などのある程度決まったジャンルの人が集まりがちになるが、ここには様々なジャンルのクリエイターがいるので、予想もしないコミュニケーションが生まれることが面白いといいます。


空間を退化させることで生まれる気づき

環境改善を目的にした緑に機能や必要性を持たせた空間は、「人々が長い時間を花や緑と暮らすことで人生豊かになる」という考えのもとデザイン、設計されています。



都市化が進んでいる近年、オフィス内にいると雨が降っている事にさえ気づくことなく、外に出て空を見上げることもない。それは、人の感覚が退化していることを意味すると梅澤さんは言います。確かに大都市に住んでいる人ほど、自然に親しみたいと思っている人は多いでしょう。



梅澤:
人と自然の距離が急速に遠くなったことで、人はこの無機質な空間に無意識のうちにストレスを感じていると思います。使いやすさに特化したデザインは、便利な一方で人の“感覚”を退化させていることに繋がっており、だからこそ、“空間”を退化させることが必要だと私たちは考えています。その思いをこのオフィスで具体化しました。



そんな彼らのオフィスには、木材でできた表面が凸凹のデスクが置いてあります。敢えて使い勝手の良くない要素を取り入れることで、人々の感覚を進化させているといいます。



木目の不規則な流れや植物の有機的なリズムに気づくことで、人の感情や潜在意識が活発になり、それが私たちにとって仕事だけでなく普段の生活に活かされ大事なものへと変わっていくのでしょう。



デザインをする際に一番頭を悩ませたというデスクの配置も、規則正しく並べられている一般的なオフィスとは異なり、3つの大きな木材のデスクを、共有して使用することでカフェのようなオープンなスタイルになっています。そして、緑と重なることで、公園のような空間を創り出しています。半年に1回、くじ引きで席替えもするそうです。現在、広さ24坪に25人が在籍している同社は、席同士の距離にゆとりがあるとはいえませんが、デスクの間にあしらわれている木々や、毎週生け替える花が見えないパーティションの役割を果たし、心地よい空間を生み出します。


植物の他に、水もオフィスづくりには欠かせない要素だといいます。同社のオフィスにおいても、流れる水の音が見えない壁をつくり、視覚のみならず聴覚に働きかけたゾーニングを実現しています。



また、この自然を活かした連続的な空間づくりは、社員同士のコミュニケーションに繋がる効果もあるようです。



梅澤:
朝に新芽が生えていたり、夕方には花が蕾を閉じるなど、そういった細かな気づきが社員同士の会話のきっかけになっています。そして私たち自身が、実際にこの空間で過ごし“心地よさの効果“を感じることを大切にしています。





オフィス内にも関わらず、公園にいるときに感じる木々の木漏れ日や緑に囲まれた感覚に満たされる同社のオフィス。社員の皆さんもランチは外食よりも近くでテイクアウトをして、オフィスで食べる方が多いそうです。たくさんの緑が置かれているため、朝は外よりも酸素濃度が高いという。外で食べるより気持ち良いのかもしれないですね。



「らしさ」を表現できるオフィスはオウンドメディアの一つになる

オフィスワーカーにとって、オフィスは日常の大半を過ごす場所です。



そのオフィスを働きながら癒される空間に変えていこうという取り組みは、海外からも注目されています。もうすでに公園をテーマにオフィスを創っている会社も少なくないそうです。


木や植物、水、光などの公園の要素を至る所に散りばめた同社のオフィスは、科学的にもストレスを軽減する効果が認められた設計だといいます。実際に、大学の研究で人の視野に10%~15%くらいの緑が入ってくるとストレスが軽減されるというのが科学的に証明されました。緑が人に与えるストレス軽減の効果の証明を感覚としてだけでなく、数値化するという取り組みを「コモレビズ」という最先端の緑化プロジェクトとしてパソナ・パナソニックビジネスサービス株式会社、日本テレネット株式会社と合同で取り組んでいる同社。



これまでは実際にオフィスを見せ、緑がある空間の素晴らしさを伝えても “緑がたくさんあって素敵なオフィスですね”と、訪れた人のみが体感するだけで終わってしまうことも多かった。そこで緑化の効果を数値化することで、経営者など実際に緑がある空間を体感していない人にも、オフィスに自然を取り入れる良さを届ける事が可能になり、オフィスの緑化・パーク化に繋がっていくといいます。



梅澤:
今後、オフィスはオウンドメディアの一つになると思う。Websiteとオフィスが企業の顔であり、アイデンティティーを示す場に間違いなくなっていく。大企業も中小企業も個人事業主も、自分らしく自由に働く時代にあった、らしさを表現できる場が益々求められる、そんな時代になっていくと思います。





成長企業のオフィスをみると、オリジナリティ溢れる空間が多く、各々の特徴が表現されているように思います。自分たちの考え方、フィロソフィーをオフィス空間で表現していくことにより、働き方はさらに多様化し、新しい発想をもたらす場となっていくでしょう。そして、緑や自然には、人の感覚を呼び覚まし、その新しい発想を可能にする力があるのかもしれません。



訪れた人全てが癒されるオフィス。
お話を伺ったつかの間の時間でしたが、彼らのオフィスを出るときには私自身この空間の心地よさに浸っていた分、とてもリフレッシュしていました。皆さんも、仕事終わりの帰り道にお花でも買ってみませんか。


Company Profile
parkERs(株式会社パーク・コーポレーション)
WEBSITE : https://www.park-ers.com/
業種  :空間デザイン
創立年 :2013年
社員数 :43人(青山オフィス在籍25人)


物件情報
名称   :PORTAL POINT AOYAMA
所在地  :東京都港区北青山3-5-6 青朋ビル本館2F,3F
構造   :鉄筋コンクリート造 地上10階地下1階建
竣工年  :2012年3月(3F)、2015年12月(M2F)、2016年5月(2F) (リノベーション時)
WEBSITE : https://ordermade-tokyo.jp/for-rent/portalpoint-aoyama/