JOURNAL

vol.208

JOURNAL - 2024.12.19

JOURNAL - 2024.12.19

vol.208

リアルゲイトと関係者が本音で語り合う「“FIRST ENGINE” Communication Party」トークセッションレポート Vol.2

 

EVENT

  • Share on

■イベント概要
リアルゲイトの新スローガン「FIRST ENGINE」のローンチイベントとして、2024年12月5日(木)、東急プラザ表参道“オモカド” 5F「LOCUL」で開催した「“FIRST ENGINE” Communication Party」。イベントの目玉であるトークセッションのレポートをお届けします。

■新スローガンについて
リアルゲイトは「古いものに価値を、不動産にクリエイティブを、働き⽅に⾃由を」というビジョンのもと、都⼼部を中⼼に様々な空間の企画・運営を⾏っています。こうした取り組みをさらに加速させるため、これまで大切にしてきた想いを体現するスローガン「FIRST ENGINE」を策定しました。⼈やモノが集い、カルチャーの醸成や賑わいが絶えず⽣まれる“⽣きた空間”を創ることに、リスクを恐れず挑むファーストペンギンであり続けたいという思いが込められています。

■セッション概要
リアルゲイトに深く関わりのあるゲストをお招きし、それぞれの視点から見えるリアルゲイトや、それぞれにとっての原動力=FIRST ENGINE、そして未来について語りました。

■プロフィール

渡邊 学
株式会社リアルゲイト 専務取締役 事業企画室長
2010年に2人目の社員として入社。創業期より、リアルゲイトの成長を牽引。2018年取締役就任。事業領域の拡大にともない、現在は専務取締役 事業企画室長として、組織全体を幅広く管掌する。

志津野 雷
写真家/CINEMA CARAVAN主宰
自然の中に身を置くことをこよなく愛し、写真を通して本質を探り、人とコミュニケーションをはかる旅を続けている。近年では、ANA機内誌「翼の王国」等雑誌、Ron Herman、The north face等広告撮影を中心に、六ケ所村再処理工場の事実を知りに行く旅『WAVEMENT』企画、撮影で担当。フランスの騎馬舞台芸術劇団『ZINGARO』のドキュメンタリー撮影や、『境界線』をテーマに作品制作する現代美術作家栗林隆氏のプロジェクト『YATAI TRIP』など、アーティストとのコラボレーションにも力を注ぐ。

元木 大輔
建築家/DDAA代表/DDAA LAB代表
武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、スキーマ建築計画勤務。2010年DDAA設立。2019年、コレクティブ・インパクト・コミュニテイーを標榜し、スタートアップの支援を行うMistletoeと共に、実験的なデザインとリサーチのための組織DDAA LABを設立。2021年第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展に参加。2023年夏にオープンしたコミュニティ商店街「LOCUL」のインテリアディレクション、デザインを担当。



■テーマ1
街にいい空気をもたらす空間とは?

元木
目的を持たない空間が、街に必要なんじゃないかと思います。当たり前ですが、思った通りに人は動いてくれないし、動くはずもない。それを強いコンセプトで誘導していたのが今までの空間の作り方であり、悪い意味ではなく、それが時代に合っていたのだと思います。基本的に、建物は何かしらの目的があって建てられています。オフィスは仕事をするため、図書館は過去の知恵にアクセスするため、病院は具合が悪い人のためといったように。目的のある建物ももちろん必要ですが、私はどちらかというとそうではない空間が、街にいい空気をもたらしてくれると考えています。公園や海辺などは分かりやすい例で、くつろいでいる人もいれば遊んでいる人もいる。おしゃべりしている人もいれば寝ている人だっている。用途が限定されていない空間には、幅広い人を受け入れられる「おおらかさ」があると思います。DDAAで長崎のHIROPPAという公園の設計を手がけていますが、その時に意識したのは、強制しないこと。HIROPPAには、定番の遊具がありません。たとえば滑り台は、登って滑り降りることを強制してるとも言えますよね。だからHIROPPAでは、地面に高低差を作ることで遊ぶ仕掛けだけを作りました。人はみな考え方が違うので、「これが楽しいんだよ」と無理に同じ方向を向かせようとしてもピンとこない。各々が自由に楽しんでいるけど、全体としてまとまりがある。どうやったらそんな空間を作れるのか、日頃から考えています。

渡邊
行動を強制しようとすると上手くいかないですよね。私は「すでにある空気を崩さずにどう活性化するか」をテーマに据えておくことが、街にいい空気をもたらす空間づくりに繋がると思っています。活性化のために新たな人の流れを作る必要もあると思いますが、地域の方々や既にある空気感を壊したり、無視してまで街づくりを推し進めようとすると良くない方向に進んでいきます。既にいる方々とwin-winの関係をどう作って発展していけるかが重要だと思っています。

志津野
自分は逗子という小さな漁村を盛り上げるべくトライしていますが、街の人との関係の築き方は大事だと思いますね。お二人の言うように価値観を押し付けたくないと思っていますし、同時に干渉されたくないとも思います。これは街の人が嫌いな訳ではなくて、みなさんのことを尊重しているし大好きだからこそなんですね。押し付けず、干渉されない。それでいてピースフル。そんな状態が心地いいなと思っています。自分は逗子海岸映画祭という野外シネマを主催していますが、スクリーンを通じて自分という人間を知ってもらえていることが、心地いい関係を作ることに繋がっています。上映する映画をセレクトすることは、自分という人間を表明すること。自分は何が好きで、何が嫌いで、何にストレスを感じているか。早々に伝えているので、その後のやり取りが楽なんですよね。相手のことを尊重した上で、干渉しすぎずにいい関係を作ろうとする。そんな姿勢が、街にいい空気をもたらすためには必要だと思います。

渡邊
街を活性化していく上で、建物や空間を作るだけでは50%しか達成できないと思います。作り上げた後にどう運営するか、コミュニティをどう構築していくかが残りの50%であり、街づくりの鍵を握る部分だと考えています。

■テーマ2
あなたにとってのFIRST ENGINE(原動力)とは?

志津野
アンチテーゼです。世の中に対しての「おかしいな」という疑問が、自分を動かしています。2007年に青森の六ヶ所村にある核燃料の再処理工場を訪れた時、報道で聞いていた情報と現地の状況が大きくズレていた。福島の原発事故の際にもそれが明らかになって、「絶対おかしいじゃん」という世の中に対する疑念が膨らんでいきました。それで、国会議員の人に直接疑念を伝えにいったこともあったけれど、全然聞き入れてはもらえなくて。やがて、反発や抗議にエネルギーを注ぐくらいなら、自分やみんなが純粋に好きなものを見つけて、いいじゃんって思うことや楽しいと思えることにエネルギーを使った方がいいんじゃないかと思うようになりました。自分の場合、それが海だったんですね。ただ純粋に、綺麗な海にプラスチックを捨てたくないよねと思う人を増やしていった方がいいと思いました。その想いが、逗子海岸映画祭を開催する原動力になっています。

渡邊
個人的な話ではありますが、30代後半〜40代になってから、共感し合える人たちとの繋がりが増えてきているなと感じます。仲の良い人はそもそも前提となる思想に共感しているので、その人達の発信することは素直にいいなとか、一緒にやりたいなと思うことが多いですね。志津野さんのおっしゃっていたことにも繋がりますが、否定するのではなく、純粋にいいなと思ったものや人を繋げていく姿勢ってすごく大切だなと思います。

元木
私の原動力は、音楽ですね。一日中音楽を聞いている生活を、30年ほど続けています。いまだに飽きないので、一生飽きないんだと思う。音楽って、「音を楽しむ」と書くじゃないですか。中学くらいまで、自分にとっての音の楽しみ方は、楽器を演奏することでした。練習したら上手くなるというのが、純粋に楽しかったんですね。あるとき、同級生の家に遊びに行ったら、そいつのお兄さんのCDがかかっていたのですが、それが自分にとって衝撃的でした。下手なのにカッコよかったんです。上手いからカッコいいと信じていた自分は、そんな訳がないと思いました。でも何回聞いても、やはりカッコよかった。この出来事がきっかけで、クラシック的な楽しみ方だけじゃなく、初期衝動的なパンクの楽しみ方を覚えました。音楽から得られる喜び、そして音楽という言葉にも含まれている「楽しむ」という姿勢が、自分の原動力になっています。

■テーマ3
これからのリアルゲイトにどんな期待を抱いているか?

元木
思いついちゃいました(笑)。老人ホームを作ってほしいです。なぜ老人ホームなのか。小学生の頃は学区で区切られるので、近くに住んでいて同じ年に生まれた人とコミュニティが形成される。つまり、地域性がコミュニティ形成の大きな要因となります。それが段々と、高校くらいから自分で選べるようになってきて、コミュニティの幅が広がっていく。なのに、年をとって体が衰えていった時に、家からの距離や予算などといった趣味嗜好とは関係のないところで再びコミュニティを形成せざるを得ないのって、不健全だなと思うんです。リアルゲイトには、趣味嗜好と地域性のバランスの取れた新しい老人ホームの形を作ってほしいですね。自分の場合、音楽で繋がる老人ホームとかがあったら喜んで入居します。

志津野
リアルゲイトはもちろん、その他の不動産企業など各社巻き込んで、楽しむことや生きることが環境や地域に還元される「森」を東京に作っていきたいと思います。僕の仲間が今、茅場町にあるビルの屋上にKAYABAENというコミュニティガーデンを作っています。KAYABAENには、和気あいあいとした農園や、採れたて野菜を調理できるプロ仕様のキッチン、ビルで出た生ゴミを堆肥に変えてくれるコンポストなどがあり、食べることを通じて健康で安心な街づくりに繋がっていくような工夫があります。こんなふうに、堅苦しくやるのではなくて、みんなの楽しむことや、生きることが、環境への取り組みや街づくりに繋がっていく状態が理想。リアルゲイトとは、そういった取り組みを一緒にやっていけると楽しいのかなと思います。
逆に渡邊さんはリアルゲイトをどうしていきたいですか?

渡邊
街の人、入居者さん、ビルダーさんなどリアルゲイトが関わるすべての人とwin-winな関係性を作っていきたいと思います。繋がりがあるなら、giveする一方でもtakeする一方でもなく、お互いに感謝できるwin-winを目指していく。そういう考え方を持ち、広げていけるような組織になれたらと思います。いい関係性、いい空気、いい街を作っていくために。自ら率先して熱量高く動くという姿勢こそが、FIRST ENGINEに宿るリアルゲイトらしさです。本日はありがとうございました。

【“FIRST ENGINE” Communication Party】
会期:2024 年 12 ⽉ 5 ⽇(⽊)17:00〜21:00
場所:東急プラザ表参道“オモカド” 5F「LOCUL」(東京都渋⾕区神宮前 4-30-3)
主催:リアルゲイト
WEBサイト:https://jointhub.jp/firstengine/